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Quantum Orange 1st EP『DIP-DYE』Release Interview

Quantum Orange 1st EP『DIP-DYE』Release Interview

東京を拠点にBlack Boboiのメンバーとしても活動をしている Julia Shortreed と、ベルリン在住のアーティスト Rosa Anschütz によるユニット Quantum Orange (略称QO) が本格始動し、 7月13日に1st EP 『 DIP-DYE 』をリリースした。
7月20日には表参道WALL&WALLにてPhewとの2マンで初ライブを決行。
2人の出会いやQO結成のきっかけをはじめ、活動拠点が違う彼女たちが如何にして共同で音楽制作に向き合っているのか。言葉や感情に丁寧に寄り添う2人に話を伺った。
  • まず初めに、Quantum Orangeのお2人の出会いをお聞きしたいです。
    Julia Shortreed(以下J) HOT BUTTERED RECORDSの山口さんっていう方がいて、山さんから「Juliaに合いそうな女の子がドイツから来るから、一緒にライブしない?」という連絡が来て、それがRosaだった。
    そのライブで2人ともお互いの音楽性に惹かれたのもあって、休憩時間にいろんな話をして自然と仲良くなったんです。
    その翌年、ヨーロッパに行くタイミングでベルリンにRosaに会いに行き、1週間Rosa宅に泊めさせてもらい、同年8月にRosaが東京に来ることが決まり、せっかくならライブしようと数ヶ所都市を回る小さなツアーを計画したんです。
    仲良しの友人&音楽家、山本 啓(NABOWA)が手伝ってくれて、大阪、京都、福井、金沢の4都市を3人で回りました。

    Rosa Anschütz(以下R) その時はまだ19歳で。

    J Rosaは作った音楽をSoundCloudに上げていたけどライブはまだしたことがなくて、日本が初ライブだったんだよね。
    啓と町から町へ車で移動しながら演奏して、小さなツアーだったけど濃厚だったよね。
    福井の鯖江ではお尻まで刺青を入れたお兄さんと仲良くなり話をしたり普段合わない人と会えたりね。
  • 2017年初めて会った時の最初のお互いの印象は?
    J Rosaのダークで幽玄な音楽を聴いて人柄を想像していたのだけど、話したら少女みたいにチャーミングで一気に親近感が湧いた。奏でる一音一音がタイプでしたね。

    R 自分のことを歌ってるSSWだからすごくパーソナルなことを歌っていて、”その歌を好きになるってことはその人のことを好きだ”っていうこととイコールになるっていうか。そんな人ってあまりいない。
    出会ったときから通じ合った部分があったと。
    J そうだね。
    “そんなに喋らなくても分かり合える”みたいな感覚はあった。
  • 意気投合をしてSSW同士でツアーをした後、Quantum Orangeの結成は早かったのですか?
    J 最初、そんな計画は全くなかったよね。
    2022年にRosaが私に「1曲アルバムで歌って欲しいんだ。助成金も出るからベルリンに来ない?」って連絡をくれて、
    1曲参加する気持ちで行こうと思ったら助成金が下りなくて、でももう行く気持ちでいたから、旦那に「出産頑張ったからベルリンに行ってくる!」と、自分へのプレゼントにベルリンへ行きました。
    2017年のツアーで生まれた共作の曲や、2020年のコロナ禍でオンラインで送り合ったデモがあったから、せっかく行くならレコーディングしよう!という話になり急遽決まったんだよね。

    R この2017年のツアーで生まれた曲というのが、『DIP-DYE』のM2「7」で、日本の小さなツアーでコラボ曲として、何度も演奏したね。

    J Rosaが長年の音楽パートナー&プロデューサーのJan Wagnerに相談してくれて、レコーディングしようとなり、彼のスタジオで4曲レコーディングをして、
    「じゃあバンド名何にする?」ってなってRosaが”Quantum Orange”っていう案を出してくれて、他にも候補があったから、たまたま入ったブティックのデザイナーさんとかにバンド名どれがいいかな?って相談したり。笑
    ”QO”って短くした時の音が好きだったことや、
    他にも名前が同じバンドがいなかったから”Quantum Orange”になったね。
    曲から出来上がった感じだったのですね!
    Rosaさんは2023年のアルバム制作の時になぜジュリアさんに声をかけたんですか?
    R 私とJuliaの声のハーモニーがすごい良いなってずっと思ってたから、自分のアルバムでも2人で交互に歌うか、ハーモニーでコーラスするか、何かJuliaの声と合わせてアプローチしたかったんだけど、結局前もそうだけどコロナ中にトラックを送り合ったところで最後まで曲は完成しなかった。

    J Rosaのアルバムの曲を聞いて、試しにアイディアを入れたりしたものの、
    私が入る必要ないくらい曲が美しく完成されていたから、最終的にいらないよねってなった。
    会ってると簡単に進むことがオンラインだと進みづらいことが多いなと感じるんだよね。
    今回も会って一緒にいるとアイディアが色々出てきて、4日間で5曲作れたしね。

    R もし友達と一緒に作るなら、同じ場所にいて一緒に作らないと曲は作れないと思う。誰かの曲に歌詞をつけて自由に歌うとかだったらオンラインでも出来るけど、曲を作るっていう部分に関しては一緒にいながら作らないと出来ないね。
    ”直接会って作る”というスタンスが2人に合っていたんでしょうね。
    J そうだね。
  • 一緒に曲を作っていて、共通点やお互いから影響を受けた部分はありますか?
    R いつもスタートが、使ってなかったデモ曲のスクラッチみたいなのを持ってきてスタートするよね。

    J それを題材に「ここのベースラインを使おう」とか「上にギターを重ねてみよう」とか私が弾いたリフにRosaが歌を乗せたり、セッションみたいに作ってるんだけど、きっかけはお互いのスクラッチからスタートするから、コミュニケーションから始まるというか、会話の流れで作り出す感じですね。お互いに思いつく言葉を溜めておいたりして会った時に見せるんだけど、たまたま内容が似てることとか重なることがあって。
    溜めていた言葉の中から共通点を探して、進めることもあるね。
    今作の1st EP『DIP-DYE』は話を擦り合わせる前からイメージが似ていたのですか?
    J イメージみたいなものは何もなかったんだよね。
    2曲のデモがあるだけで、どんな方向性に進むかは二人とも未知だった。新しくベルリンで書いた2曲も合わせて、「これ面白そう!」って浮かんだことを試して、楽器を弾いてみたり、メロディーを乗せたりして作った4曲だったね。

    R “DIP-DYE”といえば、Juliaがベルリンに来た時に私がタイダイ柄にハマっていたんだよね。

    J Tシャツとかめちゃくちゃタイダイ柄着ていたよね。
  • タイトルに”DIP-DYE“を命名した経緯を教えてください。
    J Rosaが何個か候補を考えてくれた中にDIP-DYEがあって、”染める=DIP-DYE”ってことで、Quantum Orangeの初めてのEPを通して”みんながQOの音楽に耳を浸す”みたいなイメージも含めれるしいいねとなり、このタイトルを選びました。
    今作のアートワークについて教えてください。
    J EPの歌詞の中で『あなたはまだ若い、全てを話したくなければそれを肺から吐き出せばいい』という一文があるんですけど、その一文から着想を得て、肺は2つで1つ、対象的にあって、ビジュアル的にいいなって思っていたんです。
    たまたま長野に行ったタイミングで大量のクルミを買っていたことで、クルミについて調べていたら綺麗に真っ二つに割れたくるみの写真がでてきて、くるみが肺のように見えたんです。しかも角度を変えると、人間が2人いるようにも見えておもしろいなと思って、大量のくるみでオブジェを作りました。
    粘土でくるみをくっつけながら多面体を作っていき多面体をさらに粘土で覆っていき、
    半分は球体に小石を埋め込んでいき、半分はツルンとした物体に完成しました。できたものを部屋で俯瞰しながらiphoneで写真を撮ってRosaに送ったら、この写真いいね!となり、そのまま採用。ストックイメージやsample画像をイメージしながらRosaが文字を入れました。
    Rosaさんの肺の歌詞とJuliaさんのクルミを見た時の感覚がリンクしたんですね。
    J くるみの写真を見た時は感動しましたね(笑)
    お2人はスピーディーに楽曲制作をされていますが、今作はどういう経緯でこの4曲を選んだのでしょう?
    R 滞在中に4曲しか作らなかったので自然にこの4曲になったの(笑)

    J 「DIP-DYE」っていう曲は2020年ごろ、Rosaがテクノに興味があった時に書いた曲。
    真新しい曲はM1「I didn't think of you as a stranger」とM3「Overwhelming」で、ベルリンで作った曲だね。

    R でももうテクノはいいです(笑)

    J テクノは作り飽きたらしい(笑)
  • Photo by Kota Ishida
    歌詞は心境、心の内の部分の感じを出してる曲が多いですか? 歌詞の作り方はどのような流れなのでしょうか?
    J Rosaは基本、自分の気持ちを毎日日記に書いてるんだけど、私がそれに合うような物語を自分の日記から探してくっつけて歌詞を書くって感じだった。M3「Overwhelming」は結構、内面的に起こってたことを書いてたね。

    R 2人の日記を組み合わせて、お互いが喋ってるみたいに作っていったね。
    「私、最近こんなことがあったんだよね」って言ったら、それに対して「あなたはまだ若いんだから人に言いたくないことは、言いたいって思うまで言わなくていいじゃない」っていう掛け合いをしていくように歌詞を考えた。
    友情から成り立っていてそこが歌詞にも繋がっていて、そのまま曲に出てるのが面白いです。
    R 結構長い間会ってなくて、3ヶ月に1回ぐらい電話をしてお互いの近況を報告をし合うんだけど、1時間の電話とかだと喋りきれないこととかもあって。それを日記を通してお互いの最近のことを分かりあうみたいな。

    J そういうこともシェアしあって歌詞を作っていったね。
  • Photo by takachrome
    先日行われた表参道 WALL&WALLでの初ライブはいかがでしたか?
    R 作ってからすぐに発表というハードスケジュールでストレスな部分も多かったけど、ちゃんと発表できて納得できるものができて良かった。学びました。

    J 今回新しく作った5曲をドラマーのTaikimenにシェアして、どんなビートがいいか相談ベースから始めたんだけど、時間がない中一緒に考えてくれて、いろんな方向からサウンドアプローチをしてくれて、楽曲が変化していくのがとっても面白かった。Taikimenに本当に感謝しています。
    ライブでは、自分達の曲に没入することができたからそれがすごく良かったなと思っていて、お客さんがそれをどう楽しんでくれたかはまた別の話なのですが、緊張感のあるいいライブでした。
    3人のバランスがとても良くて、Taikimenさんも浸透して1つの物体として見えた感覚でした。観ている方1人1人に染みているなと感じるライブでした。
    R ありがとうございます。
  • Quantum Orangeの今後の目標や、やりたいことはありますか?
    R 次は7年も空けたくないから、音楽を通じていろんな場所で一緒にライブができたり、ベルリンと日本の距離でも2人が行き来し合うことが当たり前になるように、Quantum Orangeが進んでいけたらいいな。

    J 今回Taikimenに入ってもらっていろんな可能性が見えたこともあって、生ドラムとエレクトロの組み合わせ方をもっと研究したいなと思いました。
    まずは良いアルバムを作りたいですね。

    R 今回日本には持ってこれなかったけど、ベルリンのスタジオにあるモジュラーシンセサイザーで音を作っていくことも今後やってみたいです。
    最後に、このインタビューを読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。
    R 次日本に帰ってきて演奏できることを楽しみにしているので、その時また会えたら嬉しいです!
【Quantum Orange】(クォンタムオレンジ)
略QOは、ベルリンを拠点に活動するミュージシャン Rosa Anschützと東京を拠点に活動するミュージシャン Julia Shortreedのユニットである。
2016年 ローザが1人で日本を旅行した際に2人は出会い、渋谷のライブハウスで共演をしたことで、音楽、友情ともに交流を深める。
ローザは今までにEP『Rigid』アルバム『Votive』『Goldener Strom』『Interior』をリリース。大学でトランスメディアアートを学び、曲ごとに作品を作り音と作品を合わせて表現するという、独自の表現技法で注目を集めている。
ジュリア ショートリードは今までにソロとしてアルバム『Violet Sun』をリリース、小林うてな、ermhoiと共にBlack Boboiとして『Agate』『SILK』を発表。

2023年夏、ベルリンで行われたレコーディングでは、ローザの長年のコラボレーターであるヤン・ワグナーとを迎え、エレクトロの中に2人の声と生楽器を融合させ、有機的で幽玄な4曲が完成した。
今年7月に1st EP『DIP-DYE』をリリース。

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1st EP 『DIP-DYE』
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